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マンション防災は管理組合の仕事|在宅避難時代に理事会が備えるべきこと

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マンションの防災というと、水や食料をどれだけ備蓄しているか、非常持ち出し袋に何を入れているかといった「個人の備え」の話になりがちです。防災の日(9月1日)の前後になると、こうした一人暮らし向けの防災リストがあちこちで紹介されます。

けれど、マンションという建物特有の防災は、実は個人の努力だけでは完結しません。エレベーターや貯水槽、共用の廊下や備蓄倉庫は、区分所有者一人では動かせない「共用部分」であり、その管理責任を負っているのは管理組合です。理事会の役員になって初めて、この事実に気づいたという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、個人ではなく「管理組合」という組織の視点から、マンション防災で押さえておきたいポイントを整理しました。最後に、次の理事会にそのまま持ち込めるチェックリストも用意しています。

結論だけ先に知りたい方へ
在宅避難が基本になった今、管理組合がやるべきことは大きく4つ。①各家庭の備蓄では対応しきれない共用の防災備蓄をそろえる、②形だけで終わらない防災マニュアルを作る、③自治体の補助金を使って費用負担を抑える、④エレベーター停止時の対応を住民に周知しておく、です。

在宅避難が基本になった今、なぜ「管理組合の防災」が必要なのか

耐震性が確保されたマンションでは、建物が無事なら避難所に移動せず自宅にとどまる「在宅避難」が基本とされています。倒壊のおそれが少ない住民まで避難所に押し寄せると、避難所の受け入れ能力がパンクしてしまうためです。

ただし、在宅避難ができるかどうかは、電気・水道・ガスといったライフラインと、エレベーターや貯水槽などの共用設備が生きているかどうかに大きく左右されます。これらは区分所有法上、個々の住戸ではなく管理組合が管理責任を負う部分です。つまり「在宅避難できる住環境を維持すること」自体が、管理組合の防災上の役割ということになります。

一人暮らし向けの防災情報はネット上に無数にありますが、「管理組合として何をすべきか」をまとめた情報は、専門業者のブログを除くとまだ多くありません。理事の任期は多くが1〜2年で交代するため、前任者のノウハウが引き継がれず、防災対策がその都度ゼロから議論される管理組合も珍しくないのが実情です。

備蓄品は「各家庭」と「管理組合」で分担して考える

備蓄というと各家庭の話に見えますが、管理組合が用意すべき「共用の備蓄」と、各家庭に委ねる「個人の備蓄」を分けて考えると整理しやすくなります。

個人の備蓄の目安は、内閣府の指針を踏まえるとおおむね次のとおりです。

  • 飲料水:1人1日3リットル×最低3日分(できれば1週間分)
  • 簡易トイレ:1人1日5〜7回分×日数が目安(例:4人家族3日分なら60〜84回分)
  • 食料:レトルト・缶詰など火を使わずに食べられるものを3日〜1週間分

これらは各住戸で備えるのが基本ですが、管理組合として「備蓄の目安」を掲示板や広報誌で案内するだけでも、実際に備えている世帯の割合は変わってきます。

一方、各家庭では用意しにくいものは、管理組合が共用部で備えておく必要があります。具体的には次のようなものです。

  • 発電機・投光器(停電時の共用部の照明確保)
  • マンホールトイレ、または簡易トイレの共用ストック
  • 救助工具(バール、ジャッキ、油圧式カッターなど、ドア・エレベーター扉のこじ開け用)
  • 担架、AED、応急手当セット
  • トランシーバーや拡声器(館内放送・エレベーター停止時の連絡用)

保管場所は管理室や共用の防災倉庫が一般的ですが、地下や1階に集中させると水害時に使えなくなるリスクもあるため、上層階にも一部を分散させる管理組合も増えています。

防災マニュアルは「委員会」で作ると形骸化しない

多くの自治体や公益法人がマンション向けの防災マニュアル作成の手引きを公開していますが、ひな形をそのまま配って終わりになっている管理組合も少なくありません。実際に機能するマニュアルにするためのポイントは、次の3つです。

1. 防災委員会を設置する

理事会とは別に、防災に関心のある住民を募って委員会を作ると、理事の任期交代でノウハウが途切れにくくなります。マンション管理士や防災士など外部の専門家に加わってもらう管理組合もあります。

2. 要援護者の名簿を作っておく

高齢者、乳幼児のいる家庭、障がいのある方など、災害時に支援が必要になりやすい世帯をあらかじめ把握しておくと、安否確認や物資配布の優先順位を決めやすくなります。個人情報の扱いになるため、任意提出・目的外利用しない旨を明記したうえで協力を呼びかけるのが一般的です。

3. ライフライン停止時の判断基準を具体的に書く

「電気・水道・ガスが全て止まったらどうするか」を抽象的に書くのではなく、「給水ポンプが止まったら何階まで水圧で届くか」「非常用発電機の燃料は何時間もつか」など、自分のマンションの設備に即した数字を入れることで、初めて実用的なマニュアルになります。

自治体の補助金を使えば、管理組合の持ち出しは抑えられる

防災資機材の購入は管理組合の管理費・修繕積立金から出すのが基本ですが、多くの自治体がマンション管理組合(自主防災組織としての結成が条件になっている場合が多い)向けの補助金・助成制度を用意しています。一例を紹介します。

制度(自治体)補助内容の例
東京とどまるマンション(東京都)登録マンションに対し、簡易トイレやエレベーター用防災キャビネットなど備蓄資機材の購入費を補助
マンション自主防災組織防災資機材助成事業(新宿区)指定26品目から選んだ資機材を、上限20万円相当まで現物支給
自主防災組織補助金(船橋市)資機材購入費を上限7万円まで交付
自主防災組織資器材購入費等補助金(市川市)購入費の3分の2、上限10万円+世帯数×200円を補助
災害用資器材等購入費助成(千代田区)防災計画を策定した管理組合に対し、資機材・非常食等の購入費の一部を助成

内容は自治体ごとに大きく異なり、対象品目や上限額、申請条件(防災計画の策定や自主防災組織としての届出が必要な場合が多い)もさまざまです。マンションが所在する市区町村のサイトで「マンション 防災 補助金」と検索し、防災課や危機管理課の窓口に直接問い合わせるのが確実です。申請には管理組合の総会決議や見積書が必要になることが多いため、購入を決める前に一度自治体に相談しておくと二度手間になりません。

エレベーター停止時、住民にどう周知しておくか

地震でエレベーターが止まる原因は、主に地震時管制運転による自動停止と、停電による停止の2パターンです。2009年9月以降に設置されたエレベーターには地震時管制運転(最寄り階に自動停止して扉が開く機能)の搭載が義務付けられていますが、それより古い機種では搭載されていないこともあります。自分のマンションのエレベーターがどちらのタイプか、管理組合として把握しておく必要があります。

住民に周知しておきたい行動は次のとおりです。

  • 乗車中に揺れを感じたら、全ての階のボタンを押し、最初に止まった階で降りる
  • 閉じ込められた場合は、インターホン(非常用ボタン)で連絡する
  • 広域の停電・通信混雑でインターホンがつながらない場合は、かご内に掲示された管理会社の緊急連絡先、または消防・警察に携帯電話で連絡する

この内容をかご内にポスターとして掲示し、懐中電灯・携帯トイレ・防寒シートなどの「エレベーター用防災キャビネット」を設置しておくと安心です。前述の「東京とどまるマンション」など、こうしたキャビネットの購入費を補助対象にしている自治体もあります。

なお、閉じ込め対応やエレベーターの復旧作業自体は、管理組合が独自に行うものではなく保守点検業者・消防の役割です。管理組合としては、保守点検業者の緊急連絡先と復旧の優先順位(高齢者・要援護者が多い号機を優先するかなど)を事前に確認し、住民に周知しておくことが実務上の役割になります。

各家庭でできる備えとしては、家具の転倒防止も重要な項目です。詳しい方法は地震で家具が倒れないようにする方法|賃貸でもできる転倒防止対策で紹介しているので、あわせて確認しておくとよいでしょう。

まとめ:次の理事会でそのまま配れるチェックリスト

管理組合として防災対策を進める際に確認したい項目をまとめました。印刷して次の理事会・防災委員会に配布する形でも使えます。

項目確認内容チェック
共用備蓄発電機・救助工具・マンホールトイレなどを備蓄しているか、保管場所は分散されているか
防災マニュアル自分のマンションの設備数値(給水ポンプ、発電機の稼働時間等)を反映した内容になっているか
要援護者名簿高齢者・要支援者の把握と、同意取得の手続きができているか
補助金所在する自治体の補助金・助成制度を確認したか
エレベーター対応自分のマンションのエレベーターが地震時管制運転に対応しているか把握しているか
周知物エレベーター内の非常時行動ポスター、防災キャビネットを設置しているか
引き継ぎ理事交代時に防災対策の資料・ノウハウを引き継ぐ仕組みがあるか

個人の防災グッズをそろえることも大切ですが、それだけでは足りない部分を埋めるのが管理組合の役目です。次の理事会では、まずこの7項目のうちどれか1つだけでも、話し合いの議題にあげてみてください。

  • この記事を書いた人

taa.96

同棲を機に家具を総入れ替えして早3年。安さだけで選んで失敗した経験から、購入前は必ず公式スペックと知恵袋・レビューのリアルな声を突き合わせてから記事を書いています。良いところも悪いところも正直に。